第76章

絵子のおだてに乗せられ、すっかりいい気分になった明孝は、酒の勢いも手伝って鷹揚(おうよう)に手を振った。その顔には、父親としての威厳と得意満面な笑みが張り付いている。

「当たり前だろう! 未来は俺の実の娘だ。誰よりも良くしてやるに決まっている!」

その言葉が落ちるや否や、それまで静観していた未来がふっと笑った。だが、その瞳の奥は氷のように冷え切っていた。

「あら、そうですか?」

彼女は涼やかな瞳を上げ、明孝を真っ直ぐに見据えた。

「でも今日、従姉妹の杏那ちゃんが自慢していましたよ。お父さんが最近また、たくさんお小遣いを振り込んでくれたって」

彼女はそこで言葉を切り、困り果てたよう...

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