第82章

蒼司の声は決して大きくはなかったが、未来の心に冷たい波紋を広げた。

やはり、彼女か。

その答えに意外性はなかったが、心底に巣食う寒気はいっそう強まった。

蒼司は彼女の表情が瞬時に凍りつくのを見て、瞳の奥に憐憫の色を滲ませ、声を低くした。

「お前は傷を治すことだけ考えろ。この件は、俺が片付ける」

未来は半ば反射的に首を振った。

「いいえ、結構よ」

そのそっけない拒絶は、まるで冷水のように、男の瞳に灯りかけた温もりを一瞬で消し去った。

蒼司の眉間には深い皺が刻まれ、周囲の気圧が急激に下がる。底知れぬ瞳が彼女を射抜き、まるで嵐の前触れのような不穏な空気が漂い始めた。

「未来」

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