第83章

蒼司は彼女の愛らしい姿に、瞳の奥から溢れんばかりの笑みを滲ませた。

彼は彼女の手を離すと、余裕たっぷりにシャツの襟を正す。その声には、抑え込まれた熱の名残で、わずかな嗄(しゃが)れが混じっていた。

「絵子の兄貴とは面識があってね。何度か仕事をした仲だ」

「妹を呼び戻す口実を作らせることくらい、造作もない」

未来はようやく合点がいった。

「なるほど、そういうこと……。ならよかったわ。絵子が戻ってくる前に、あなたも早く行って」

しかし、蒼司は立ち去るどころか、彼女の後について狭い洗面所を出ると、そのまま病室の椅子に腰を下ろしたではないか。

長い足を優雅に組み、くつろぎきった様子で、...

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