第95章

医師は眼鏡の位置を直すと、焦燥に駆られる未来の顔を見て、穏やかな口調で諭した。

「未来さん、まずは落ち着いてください。お母様は突発性の失神です。初期検査の結果、バイタルは安定しており、今のところ大きな器質的病変は見当たりません」

「詳しい原因については、さらに精密検査を行う必要があります」

母の命に別状はないと聞き、未来の中で張り詰めていた糸がふっと緩んだ。

彼女は深く息を吸い、頷いた。

「わかりました。ありがとうございます、先生」

その時、支払いを済ませた明孝が病室に入ってきた。その後ろには羽龍も続いている。

病室で顔面蒼白になっている未来を見ても、明孝の顔には何の感情も浮か...

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