第96章

未来の意識は母親の病状で占められており、蒼司の声に滲む、極限まで抑え込まれた感情になど気づく由もなかった。

彼女は無意識に頷き、当然といった口調で答えた。

「ええ、そうだけど。それがどうかしたの?」

ここ数日、母には二十四時間体制の介護が必要だ。ヘルパーは雇っているが、所詮は他人。不便なことも多いし、娘である自分が病院に付き添うのは当たり前のことだ。

その何の迷いもない「ええ」という言葉を聞いた瞬間、車椅子の肘掛けに置かれた蒼司の大きな手が、猛烈な力で握りしめられた。手背に青筋が浮き上がり、今にも肘掛けを粉砕しそうなほどだ。

認めた。

彼女は俺の目の前で、何一つ悪びれる様子もなく...

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