第100章

藤原創の手は、まだ江原幸子の襟元を握り潰すように掴んでいた。

泣き声は途中で喉に詰まり、首を絞められた鶏みたいに、途切れ途切れの嗚咽とえづきだけが漏れる。

力は緩まない。つま先が床から浮くほど吊り上げられ、顔色は蒼白からじわじわ紫へ変わっていく。幸子の指が必死に、創の手の甲に残る古い傷跡を引っ掻いた。

――それは、以前に彼女自身の爪が作った傷。暗赤い痂皮が、干上がった溝のように走っている。

「創……息、できない……」

ようやく絞り出した声は細く、砕けていて、潰れた喉の奥から無理やり引きずり出したみたいだった。

それでも創の視線は、丹生谷智久から外れない。

そして――棺へ。

月...

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