第103章

「い、いや……やめて……!」

江原幸子は必死に身をよじった。けれど、極限まで弱った身体じゃ、あの狂犬に敵うはずもない。

結局――カスロに力任せに押さえつけられ、床へ叩きつけられた。

凶暴な犬が、彼女の傷口に顔を寄せる。ぬるり、と舌が這い、血の匂いを確かめるみたいに何度も舐め回す。

鋭い牙先が肌に触れた瞬間、幸子はひゅっと息を呑んだ。顔から血の気が引く。

許しを乞う間もない。

がぶり。

傷口に噛みつかれ、皮膚と肉が無遠慮に引き裂かれていく。

「ぎゃああああっ!」

悲鳴が弾けた。激痛に追い立てられ、ほとんど反射で拳を握りしめ、目の前の獣を叩く。だが、犬の筋肉は岩みたいに硬い。力...

ログインして続きを読む