第114章

藤原創は何も言わず、ただ江原朱美のその目を見つめ返していた。

江原朱美は両手に力を込め続ける。けれど目の前の男は、抵抗らしい抵抗をしない。顔色は紙みたいに青白いのに、それでもなお――まるで愛おしむように、彼女を見ていた。

その一瞬、彼女は本気で思った。

このまま、絞め殺してしまおうか、と。

だが――ようやく地獄の檻から這い出てきたのだ。自分が受けた苦痛のすべては、この男から始まっている。そんな相手を、簡単に死なせるわけがない。

あり得ない。

江原朱美はゆっくりと指をほどいた。藤原創の襟元を掴むようにして窓辺まで引いていき、独り言みたいに言う。

「藤原さん。たぶん、私の育ちのせい...

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