第118章

産婦健診の報告書。白黒の画像の中で、豆粒みたいな胚が小さく丸まり、静かに眠っていた。医師は言った。胎児の心拍は安定している。数値も問題なし。出産予定日は来年の春。

江原朱美は用紙を折りたたんでポケットへしまい、病院の正面玄関を出た。待っていたのは丹生谷智久だった。車のドアにもたれ、彼女の姿を見つけると身体を起こして歩み寄る。まずは彼女のお腹に視線を落とし、それから顔を見た。

「どうだった?」

「すごく良いって」朱美は小さく笑う。「来年の三月だって」

智久は助手席のドアを開け、上の縁に手を添えてくれる。朱美が身をかがめて乗り込む、その瞬間――視界の端で、道路の向こう側がふと引っかかった...

ログインして続きを読む