第36章

その頃――都会のどこか。

江原朱美は、真っ白で柔らかな大きなベッドに横たわっていた。

白いシーツには、淡いピンクと黄色の小花模様。あの忌々しい消毒液の匂いはなく、鼻腔をくすぐるのは、ほのかな花の香りだけだ。

見渡す限り、壁は乳白色。調度もやけに温かく整えられていて、病室の無機質さとはまるで別世界。

部屋の外からは、誰かが流しているらしい静かな音楽まで聞こえてくる。

朱美はゆっくり上体を起こし、ベッド脇のサイドテーブルに手をついて、少しずつ足を床へ下ろした。

窓ガラスに映った自分を覗き込み、息をのむ。

――手入れ、されてる。

絡まっていた髪はほどけ、一本一本が滑らかに落ちる。

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