第43章

江原朱美の声は、鈍い雷鳴みたいに――頭上でどん、と炸裂した。

藤原創はよろめきながら二歩、後ずさる。目の前の女を睨みつけ、仕草の端々から「狂ってなどいない」証拠を引きずり出そうとした。

……だが、今の江原朱美は、正気と何が違う?

これまで一度だって、こんなふうに距離を詰めてきたことはない。

まして、あんなふうに自分から誘うなんて――見たこともない。

おかしい。

おかしすぎる。

現実味が、薄い。

「創! 狂った人間には痛覚がないって言うでしょ。試してみればいいのよ。朱美お姉さんが、わざと馬鹿のふりをしてるかどうか」

江原幸子の手に、いつの間にか一本の革鞭があった。前に藤原創が...

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