第44章

翌朝――早朝。

江原朱美は地下室から引きずり出され、屋敷の自室へ放り投げられた。

見慣れた部屋。見慣れた大きなベッド。温かみのある調度品。

まるで全部、悪い夢だったみたいに。

――狂ったふりをして正解だった。

少なくとも、あの湿った暗闇に戻らずに済む。

部屋の中で無邪気に遊ぶ朱美を眺めながら、廊下側の扉口に立った藤原創が煙草に火をつけた。

そして、そばに控える女中ふたりへ顎をしゃくる。

「風呂に入れてやれ。ちゃんと洗って、清潔な服に着替えさせろ。部屋を汚されたら困る」

女中たちは小さく頷き、朱美を連れて浴室へ向かった。

ほどなく、しゃあしゃあと水の落ちる音が聞こえてくる。...

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