第61章

藤原創は手にしていた紙束を、江原朱美の顔へ叩きつけるように投げつけた。脚を組んだまま、優雅に煙草へ火を点ける。立ちのぼる煙越しに、氷みたいな目で彼女を見下ろした。

「やっぱり逃げる気だったか。外に出て、中橋傑と密会でもするつもりだったんだろ」

「そうよ」

江原朱美は散らばった紙を足で踏みつけ、ぐりぐりと何度も潰した。江原幸子がどうやってこんなものを病室に忍ばせたのか――そんなこと、もう考えない。今さら重要じゃない。

藤原創の目には、彼女はただの「まだ逃げようとしている逃亡者」にしか映っていない。

それだけで、男の怒りに火がつくには十分だった。

朱美は藤原創の足元、鎖で繋がれたカス...

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