第62章

江原朱美がまだ条件を口にしようとした瞬間、藤原創は彼女の髪を掴み、顔に平手を何発も叩きつけた。ぱんっ、ぱんっと乾いた音が病室に響く。

頬はみるみる腫れ上がった。それでも朱美は許しを乞わない。瞳の奥にあるのは、折れない決意だけ。

――死んでも、この男に頭を下げない。

――まして、命乞いなんてするものか。

ひとしきり暴れたあと、朱美の意識が薄れかけているのを見て、藤原創はようやくカスロを連れ、病室を出ていった。

入れ替わるようにウィリアム教授とチームが雪崩れ込み、朱美を手際よくストレッチャーへ移す。そのまま手術室へ。

「朱美さん!」

呼び声が遠い。朱美の意識は霧の中へ沈みかけていた...

ログインして続きを読む