第64章

「お前……」

藤原創は目の前の女を懲らしめようと手を上げた。だが、宙で止まった掌はゆっくり拳へと変わり――結局、振り下ろされることはなかった。

藤原創が去っていく背中を見送ってから、江原朱美は病床に静かに横たわった。

腹の子は、いまの彼女にとって命綱だ。少なくとも当面、藤原創が直々に面倒を起こしに来ることはない。

けれど――江原幸子は?

あの女は、朱美が藤原創と一緒にいることを何より憎んでいる。もし自分が藤原創の子を身ごもったと知れば、さらに狂う。流産させるためなら、どんな手でも使うはずだ。警戒しないわけにはいかない。

ほどなくして、女中が二人、病室へ戻ってきた。

相変わらず機...

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