第69章

江原朱美の心臓は、ばくん、ばくんと暴れるように脈打っていた。江原幸子がすでに病院の正門を出たのを見届けると、彼女はもう一度――地面に転がったままの玉の腕輪へ視線を落とし、正気を失ったように外へ駆け出した。

拾い戻さなければ。

あれは母の形見であるだけじゃない。祖母と母の愛が、そこに沁み込んでいる。

何があっても、守り抜く。

だが、二人の使用人が素早く動いた。左右からそれぞれ片腕を掴まれ、力任せに引き戻される。

「江原さん。藤原さんから言いつかってます。病室の外へは出さないって。お願いですから、私たちを困らせないでください」

淡々とした警告。

扉の向こう、窓越しに立つ二人の警備員...

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