第88章

藤原家の屋敷、書斎。

密閉された部屋に煙が重く滞り、吐き出されるたび、沈んだ静寂が幾重にも積もっていく。

藤原創は、スマホに残っていた江原朱美の惨めな姿を切り取った写真を、すべてパソコンへ取り込んだ。マウスカーソルは「投稿」のボタンの上で止まっている。指先が硬直したまま宙に浮き、ほんの一押しで――彼女の人生を壊し尽くす映像が、一瞬でネットにばら撒かれる。

それでも、彼は押さなかった。

指に挟んだ吸い殻は、握り潰されてわずかに歪んでいる。赤く灼けた火が指先を焼いているのに、創は気づきもしない。

画面の中の女を、創は執拗に見つめた。どれほど無様で、傷だらけでも、瞳には一片の命乞いもない...

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