第90章

病室は、また静けさを取り戻した。

ときおり階下から犬の吠え声が響き、廊下を行き来する足音が、薄い壁越しに遠く近く揺れた。

江原朱美はベッドの上で身を縮め、背中を強張らせたまま、抑えきれず小さく痙攣する。全身に走る傷が、裂けるような激痛を送り込み、神経の一本一本が、鈍い痛みと酸っぱさを叫んでいた。

痛みは、いちばん確かな目覚ましだ。

この数日間に受けた踏みにじりと摩耗を、骨の髄にまで焼きつけ、忘れさせない。

藤原創の、偏執と冷血。独断と専横。

偏見だけで罪を決めつけ、弁明の余地すら与えず、みずからの手で彼女を底なしの奈落へ突き落とした。

江原幸子の、偽りと毒。蛇のような心。

か...

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