第92章

「研究所……?」

立ち去ろうとしていた藤原創は足を止め、もう一度病室の扉の前へ戻ると、中の二人を凝視した。

病室の中。

江原幸子が一歩、また一歩と江原朱美のベッドへ近づく。傍らの用心棒が二人、火鉢の上で焼き鏝を炙っていた。室内の温度がじわじわと上がっていく。朱美は真っ赤に熱せられていく鉄の塊から目を逸らせず、足の裏から冷えが這い上がり、背骨を伝って全身へ回った。

「もうあんたは死人みたいなものよ。だから言っても怖くない。研究所――」

言い切る前に、視界の端で扉口に立つ藤原創の姿を捉えた。幸子は瞬時に口調を変える。

「……よくも研究所のことを口にできるわね?」

「研究所を始めたの...

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