第6章

午後の陽光が障子を通してリビングに差し込む中、突然呼び鈴が鳴った瞬間、私の肩が思わずびくりと震えた。

「莉音様、雪菜様がお見えです」

神宮寺雪菜。

その名前は氷水のように全身に浴びせられ、私はその場で吐きそうになった。

彼女は下駄を履いてリビングに入ってきた。淡いピンクの和服を身に纏い、髪は精緻な髷に結い上げられ、まるで伝統的な日本画から抜け出してきた良家の子女のようだ。

だが、私は知っている。その優雅な外見の下に、どれほど悪辣な心が隠されているかを。

「水谷莉音、兄上は本当にあなたを甘やかしすぎているわ」

記憶が潮のように押し寄せる。

あの雨の夜を思い出す。彼...

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