第110章 ちゃんと頑張るしかない

鈴村佳澄は湯呑みを龍崎燈真の前にそっと置くと、幼い身体を精いっぱい折りたたむようにして、深く頭を下げた。

「龍崎さん……おちゃ……どうぞ……」

三歳の子どもなら、本来は怖いもの知らずで、無邪気に笑っているはずだ。

けれど今の佳澄は、言葉さえうまく繋げられない。緊張で小さな顔は真っ青だった。

龍崎燈真は眉ひとつ動かさず、冷えたまなざしを伏せる。

「何がしたい」

「わ……わたし……」

佳澄は指をぎゅっと絡め、震える声で言った。

「ママに……会いたい……」

その一言で、燈真の胸の奥に、名もない火がぶわりと燃え上がる。

鈴村茜。

その名に触れられるだけで、理性が削られていく。

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