第22章 手首を切ったことがある

薬を飲ませると、鈴村茜の高熱は引いた。

それから五時間ほど経った頃――彼女は悪夢の底から、はっと目を覚ました。

薄暗い病室。

テーブルの上のスマホが、何度も何度も鳴っている。

力の入らない指で端末を掴む。表示は見知らぬ番号だった。

「……ママ……」

掠れた声。次いで、幼い嗚咽が耳に流れ込んでくる。

「ママ……わたし……くるしい……」

「ママ……たすけて……どこにいるの……」

「くるしいよ……」

静まり返った病室に、少女の泣き声だけが滲むように広がった。

茜は全身の血が引くのを感じ、スマホを握る手が震えて落としそうになる。

「佳澄……」

龍崎燈真。あの狂った男が、佳澄...

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