第34章 なぜ、あんたに負けるんだ

カメラマンがいないのなら、自分でやるしかない。

鈴村茜はアオモデル会社へ戻ると、スタジオでしばらく機材をいじり倒した。手探りでボタンを押し、設定を変え、ようやくカメラの扱い方を掴む。そこからは小道具を並べ、ひとりで撮影を始めた。

十数時間。息つく暇もなく動き続けて、やっと「使える」写真が何枚か撮れた。茜はそれらをまとめ、片っ端からメディア会社へ送る。どうにか、どこか一社でも――そう願いながら。

空はもう鈍く沈み、遠い雲の端にだけ、薄い黄の夕焼けが滲んでいた。

中区の別荘へ戻ると、エプロン姿の森塚香織が、皿を二枚手にして立っていた。

「まあ。誰かと思ったら、帰ってきたのね?」

にこ...

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