第36章 一緒に温泉に入る

鈴村茜は、温井千景の電話番号も、ありとあらゆる連絡先も、すべてブロックした。

こうすれば、きっぱり線を引けると思ったのだ。

――けれど、甘かった。

温井千景は中区の別荘の門前に、直接やって来て張り込んだ。

窓辺に立てば、一目で見える。彼はただ立ち尽くし、帰る気配がない。

その瞬間、胸の底がすとんと沈んだ。海の底へ引きずり込まれるみたいに息が詰まる。

昼も、夜も。温井千景はそこにいた。

ひとりで壁際に身を縮め、冷たい風と一緒に眠っているような姿。外は身を切る寒さなのに、室内は灯りが眩しいほどで、暖房もよく効いている。

「何を考えてる」

背後の男が、氷みたいな目で茜を見た。

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