第37章 もう行ってしまった

温泉の湯船が、悲鳴で一瞬にしてざわめいた。

鈴村茜は苦悶に顔を歪め、必死に縁へ手を伸ばして這い上がろうとする。だが小野莉子は容赦なく、彼女の頭を水の中へ押し沈め続けた。

息が奪われ、意識が砕けていく。その狭間で、茜には反撃する力など欠片も残っていない。

「この恥知らずが!」

「うちの息子に近づくなって言ってるでしょ! わからないの!?」

「しつこくまとわりつくなら、殺してやる!」

森塚香織はその光景を見て満足げに口元を吊り上げ、なおも焚きつける。

「奥さま、この女、ここ最近ずっと龍崎様と一緒に住んでたんですよ」

「今日だって温泉に来るの、龍崎様に相当お願いしたはずです」

「...

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