第54章 彼のはずがない

「わかんないの? 茜はあんたなんか相手にしたくないの!」

「誰だよ、お前。お前が言ったらそれで決まりってわけ?」

温井千景は胸を張って、誇らしげに顎を上げた。

「俺は――鈴村茜の娘の父親だ」

「……は?」

さすがに普段は泰然としている龍崎燈真も、その瞬間ばかりは肩がびくりと震えた。胸の奥で、どん、と何かが爆ぜる。

助けを求めるように、燈真は鈴村茜を見る。

茜は俯いたまま――否定しなかった。

途端に呼吸が乱れ、喉がひゅっと鳴る。

温井千景が、鈴村佳澄の父親……。

それなら、つまり――。

燈真は髪を掴み、目の奥に殺意を滲ませた。

天地のすべてを叩き潰してしまいそうな、剥き...

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