第67章 俺のこと、まだ覚えているか

鈴村茜は、黒崎由良に突然名前を尋ねられるなんて思ってもみなかった。それでも、口は勝手に動いた。

「鈴村茜です」

「鈴村茜……」

相手はその名を、舌の上で確かめるようにゆっくりとなぞる。

「なるほど。鈴村さん、ですか。……ずいぶん久しぶりですね」

そう言って黒崎由良は手を差し出した。

「どうも」

さっき助けられたばかりだ。茜は迷いながらも、その手を取った。

――ただの握手で終わるはずだった。

次の瞬間、ぐいっと引かれ、胸の中へ抱き寄せられる。

「鈴村さん。俺のこと、覚えてます?」

「……え?」

「――あの夜、俺たち……」

言葉の続きが落ちる前に、茜の身体が横から乱暴に...

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