第88章 見ると吐き気がする

茜は、力なく息を吐いた。

――この狂った男……。

「いいか、鈴村茜。お前が名門に嫁ぐなんて、絶対に無理だ。俺、龍崎燈真が生きてる限り……お前は一生、名門には入れねえ!」

鈴村茜は口元を指で拭った。身体中に、男の香水の匂いがまとわりついている。

彼女は無理やり唇の端を上げ、蒼白な笑みを作った。

「ご忠告、ありがとうございます」

そう言い捨てると、腰を屈めて床に落ちた服を拾い、ぱんぱんと埃を払う。

動作は落ち着き払っていて、表情もどこか涼しい。

それが、龍崎燈真の癇に障った。

胸の奥に棘が刺さったみたいに、息をするだけで痛む。抜かないと、耐えられない。

――本気で、こいつの首...

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