第10章

和也の頬の筋肉が、ぴくりと引きつるのを琴音ははっきりと感じ取った。

彼女を射抜くようなその視線は、まるで生きたまま食いちぎろうとするかのようだった。

彼はギリッと歯を食いしばり、声を絞り出す。

「……今、何て言った!」

激怒するのは目に見えていた。だが、被害者である自分が泣き喚きもしていないのに、事の元凶である彼が、どの面を下げて潔白を装うというのか。

琴音はふっと鼻で笑った。

「お互い大人なんだから、同じことを二度も言わせないで」

「離婚協議書にサインして。そうすれば、あなたのことには二度と干渉しないわ」

その声は恐ろしいほど冷ややかだった。和也は彼女の瞳の奥に、少しでも悲...

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