第128章

琴音は「分かりました」とだけ返信し、椅子の背もたれに寄りかかった。高鳴る胸の鼓動は、なかなか収まらなかった。

この世界は、時として本当に狭い。

夜の七時。琴音は時間通りにそのイタリアンレストランに到着した。

温かみのある照明に包まれた店内には、オリーブオイルとバジルの芳醇な香りが漂っている。

予約の名前を告げると、ギャルソンが窓際の静かなボックス席へと案内してくれた。

そこには、すでに一人の人物が座っていた。

琴音の角度からは、相手の後ろ姿しか見えない。カジュアルなジャケットを羽織った中年男性で、背筋をピンと伸ばし、熱心にメニューに目を通している。

足音に気づき、その男性が振り...

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