第百三十八章

「実は、ずっと聞きたかったんだ」静まり返った車内に、司の声がやけに響いた。「あの時、どうして和也を選んだんだ?」

琴音はわずかに息を呑み、彼の方へ顔を向けた。

唐突な問いだったが、いつかは聞かれると分かっていたような気もした。

彼女は長いこと沈黙していた。司が、もう答えてはくれないだろうと思い始めた頃、ようやく重い口を開いた。

「私の人生で一番暗かった時期に……彼が、私を救い出してくれる光だと思い込んでしまったから」

その声はひどく細く、長年の疲労が滲み出ていた。

「あの年、私は十六歳だった。母が亡くなって、まだ三ヶ月も経っていない頃よ。四十九日も済んでいないというのに、父は外で...

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