第31章
琴音が近づいてくるにつれ、治夫は彼女の目元が赤く腫れているのに気づいた。
浮かべていた笑みは次第に消え、治夫は手にしていた本を閉じると、その目を険しくした。
「琴音、こんな夜更けにどうしたんだ?」
琴音は治夫から本を受け取り、傍らに置いた。何気ない動作を装いながらも、赤くなった目元をさらに強調して彼の視界に晒す。
若者のちょっとした小芝居など、長く生きてきた治夫の目には当然お見通しだった。
「何でもありません」
琴音は必死に感情を押し殺そうとしたが、声には抑えきれない涙声が混じっていた。
「ただ、しばらくお爺様にお会いしていないなと思って……お顔を見に来ただけです」
治夫は眉...
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