第59章

空は唐突に襲いかかり、琴音の顔面めがけて拳を振り上げた。しかし、その動きはひどく鈍く、拳風は弱々しかった。

どう取り押さえるべきか、琴音には一瞬で分かった。脳裏に数十通りもの制圧方法が閃く。

だが、彼女は動かなかった。空の拳が目の前に迫るまで待ち――男にとって最も屈辱的な一撃を放った。勢いよく膝を蹴り上げ、空の股間を容赦なく打ち据えたのだ。

空の顔が瞬時に苦痛で歪み、醜く引きつる。それを見た取り巻きの金髪男が、自身の痛みを忘れたかのように強がって歩み寄り、虎の威を借る狐のごとく琴音を罵倒し始めた。

「このクズが! 空さんを誰だと思ってんだ! 親父さんは水原グループの社長なんだぞ!」

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