第8章

琴音は彼の言葉など意に介さず、そのまま自室へ戻った。

扉を開けた途端、目に飛び込んできたのは足の踏み場もないほどの惨状だった。鏡台に置いてあった少しでも値の張るものはすべて持ち去られ、クローゼットの中も無残に荒らされている。

寧々が石川家に入るなり、自分の立場を見せつけようとしたのは明らかだった。

後ろに控えていた使用人は、その光景に冷や汗を流して震え上がった。

奥様の気性は穏やかだが、決して軟弱ではない。

そうでなければ、和也がこれほど彼女に無関心であるにもかかわらず、石川家をここまで完璧に切り盛りできるはずがないのだ。

「奥様……」

「客室を片付けてちょうだい」

琴音は多...

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