第85章

「冗談を言うなんて珍しいですね」

司は耳の裏をほんのりと赤く染めた。琴音と出会ってからというもの、彼は本当に例外ばかりだ。

琴音の視線は無意識に彼の右手に落ちた。

夜の闇に浮かび上がるその傷は、ひどく痛々しく見えた。

「その手……私のせいで」

琴音はまたしても自分を責めずにはいられなかった。

司は無意識に手を伸ばし、彼女の頭にポンと置いた。琴音が不思議そうに見上げると、彼はハッとして手を引っ込めた。

「馬鹿だな」

「早く薬を塗ってくれないと、傷が治っちまうよ」

琴音は思わず吹き出した。司と一緒にいると、本当に悲しい気持ちなどどこかへ消えてしまう。

ドアを開けると、琴音から...

ログインして続きを読む