第96章

夜の車内は薄暗く、窓の外を流れるネオンの光だけが、司の横顔を明滅させていた。

パパラッチから奪い取ったあのカメラは今、助手席のダッシュボードに静かに収まっている。まるで、息を潜めた脅威のように。

琴音はシートに背を預け、窓の外を飛ぶように流れていく街の景色に視線を落としていた。だが、その胸の内は石を投げ込まれた湖面のように、絶えず波紋が広がっている。

沙也加……

確かに、少し予想外だった。

沙也加は長年、海外で『人脈作り』に勤しんできた。名目は留学だが、実態は欲と見栄が渦巻く社交界を渡り歩いているだけだ。

必要に迫られるか、よほどの利益がない限り、自分から帰国することなど滅多にな...

ログインして続きを読む