第4章 彩音視点

「これは腎臓移植の手術なんかじゃない」

午前二時。廊下からの話し声で目が覚めた。ドアの小窓から覗くと、臓器の名前が書かれた保冷ボックスを運ぶ人影が見える。

心臓、肝臓、腎臓、角膜……。

全身の血が凍りついた。

私は息を殺してドアの隙間に耳を押し当てた。松本医師が見知らぬ男たちと低い声で話している。スペイン語だ。だが、いくつかの重要な単語は聞き取れた。

「三日後だ。あの女……すべて摘出する……心臓のバイヤーが最高値を提示している……」

「家族はどうだ? 怪しまないか?」

「問題ない。包括的同意書にサイン済みだ。それに、あの女は家族からも好かれていない。手術中に死んだとして...

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