第3章

私が馬小屋に着くと、彼はもう待っていた。

午後三時きっかり。川端海斗はテンペストの馬房の近くに立っていたが、馬に近づこうとはしていなかった。賢明な判断だ。ただ観察し、学んでいる。

「相変わらず時間厳守だな」

車椅子で隣に寄りながら、私は言った。

「祖母の教えです。一番目は、遅刻についてでしたから」

彼が気負いなく祖母の話をするところが気に入った。自分の経歴や境遇に、何の恥じらいも抱いていない。

「初めての本格的なレッスンの準備はいいか?」

「やったこともないことに対して、できる限りの準備はしてきました」

私はテンペストの馬房に近づいた。雄馬はすぐに歩み寄り、私が触れられるように頭を下げてきた。

「まず理解すべきことがある――馬は気を読む。お前が自分で気づくより先に、お前が怖がっているか、怒っているか、嘘をついているかを見抜く」

川端海斗は頷いた。

「今、あいつは僕から何を読み取っていますか?」

「緊張しているが、好奇心もある。そして敬意を払っているな」

私はテンペストの首を撫でた。

「その組み合わせは嫌いじゃないようだ」

「試験はパスできているみたいで、よかったです」

「ああ、これは試験じゃない。こっちが本番だ」

私は馬房の扉を開けた。

「入れ。ゆっくりで」

川端海斗が中に足を踏み入れると、私はテンペストの反応を観察した。耳は前を向き、呼吸は穏やか。肩に力みもない。

面白い。

「次はどうしますか?」

「匂いを嗅がせろ。馬はまず鼻で相手を知るんだ」

川端海斗が手のひらを上にして手を差し出す。テンペストは念入りにその匂いを確かめると、思わず息を呑むような行動に出た。

彼は、川端海斗の胸に自らの額をすり寄せたのだ。

信頼か。

「これって……普通じゃない、ですよね?」

川端海斗の声は柔らかく、驚きに満ちていた。

「ああ。普通じゃない」

私は車椅子を馬房から後退させた。

「さて、馬装の時間だ」

そのあと一時間は、予想よりも速く過ぎていった。川端海斗は私の言うことすべてに耳を傾け、的確な質問をし、自分の準備が整う前に先を急ごうとは決してしなかった。

騎乗の際にテンペストが怯えたときも、川端海斗はどういうわけか、静かに話しかけ、動きを抑えればいいと知っていた。

私が尋ねると、彼はこう説明した。

「十二歳の頃、隣の家の荷役馬の手伝いをしていたんです。乗ったことはありませんでしたが、怯えたときに落ち着かせる方法は学びました」

彼のすべてが、私が求めていたものにぴったりと合致していた。自分が探し求めているとさえ気づいていなかったものに。

基礎訓練は、私がこれまで監督してきたどの初級レッスンよりも順調に進んだ。常歩、停止、方向転換。川端海斗には天性のバランス感覚があり、テンペストのリズムに逆らわなかった。

「筋がいいな」

常歩で輪乗りを終えた彼に、私は声をかけた。

「筋がいいなんて感じませんよ。今にも落ちそうです」

「それが普通だ。その恐怖心が集中力を保たせてくれる」

騎乗のパートを終えたときには、川端海斗もテンペストも満足げな様子だった。私は二人を馬具室の近くにベンチが置かれた厩舎エリアへと連れ戻した。

「少し休んで」

私は言った。

「あなたにたくさんのルールを教えたっていう、その祖母さんの話を聞かせてくれ」

川端海斗は、忘れていた筋肉の存在をはっきり感じている様子で、どさりと腰を下ろした。

「ばあちゃんは、両親が交通事故で亡くなった後、僕を育ててくれました。あれは八歳のときでした」

「……ごめん」

「もう昔のことですから。ばあちゃんは、あるもので精一杯やってくれました」

彼の表情が和らいだ。

「大切なことは全部、ばあちゃんが教えてくれたんです。一生懸命働くこと、人に敬意を払うこと、小さなものの中に美しさを見出すこと」

「そして今、その祖母さんが病気だと」

「はい」

彼の顎に力がこもった。

「肺がんです。医者には……」

彼はそこまでしか言わなかった。言う必要もなかった。

だから金が必要なのか。だからここにいるのか。

だが、テンペストといる彼を見ていると、彼がいかに自然に訓練を受け入れているかを見ていると、その動機なんてもうどうでもよくなっていた。

「ここで待ってて」

私は言った。

「渡すものがある」

私は馬具室まで車椅子を走らせ、ガーメントバッグを持って戻ってきた。

「開けてみて」

川端海斗はバッグのジッパーを開け、ぴたりと動きを止めた。

中には、乗馬服一式が入っていた。深いネイビーに銀のボタンがついたジャケット。タンカラーのブリーチズ。オーダーメイドのブーツ。すべて、葉山理人が密かに入手した採寸データに合わせて仕立てられたものだ。

「藤井さん……」

彼の声は、ほとんど囁きに近かった。

「丸幸だ」と私は訂正した。

「これから長い付き合いになる。下の名前で呼び合った方がいいだろう」

彼はバッグからジャケットを取り出し、その生地を指でなぞった。

「これは……もったいなさすぎます。受け取れません……」

「受け取れるんだ。だから、受け取ってくれ。まともな乗馬パートナーには、まともな装備が必要だ」

そして、それを身に着けているところが見たい。

その思いは、自分でも驚くほどの強さで湧き上がってきた。

「こんなに良いものを、持ったことがありません」と彼は静かに言った。

彼の声に含まれた何かが、私の胸を締め付けた。

「まあ、これからはあなたのものだ」

彼が私を見上げ、しばし二人とも言葉を失った。やがて彼が微笑むと、まるで太陽が昇るのを見ているかのようだった。

「ありがとうございます、丸幸さん」

彼が呼ぶと、自分の名前が違って聞こえる。

「こっち来て」

何か不適切なことを口走る前に動く必要性を感じ、私は言った。

「温室を見せる」

温室へ向かう道すがら、私たちはバラ園と池のそばを通り過ぎた。川端海斗は私の車椅子の横を歩き、肩にはガーメントバッグをかけている。

「信じられないような場所ですね」と彼は言った。

「ご家族はどのくらいここに住んでいるんですか?」

「五世代だ。曾々祖父が本邸を建てたのが一八二三年だからな」

「ここを離れたいと思ったことは?」

その質問は不意を突いてきた。

「離れる? なぜ私がここを離れる必要がある?」

「さあ。他の場所を見たり、何か違うことを経験したりとか」

違うことなど、真剣に考えたこともなかった。緑桜の館は家だ。安全な場所だ。私が知るすべてだった。

「ここが、私の居場所だ」

私はようやくそう答えた。

私たちは温室に到着していた。私が鍵を開けて中へと彼を導き入れる。

その空間は、私の聖域だった。何年もかけて集めてきた珍しい標本がほとんどを占める、異国の植物がずらりと並んでいる。蘭、熱帯の花、そしていくつかの薬草。

川端海斗は戸口に立ち止まったまま、明らかに感嘆の表情で辺りを見回した。

「なんてこと、丸幸さん。これは美しいです」

彼が蘭の陳列棚に歩み寄っていく。その近づき方に、私は思わず注意を惹きつけられた。

「植物に詳しいのか?」

「少しだけ」

彼はひときわ見事な紫色の花の前で足を止めた。

「これはカトレア、ですよね?」

蘭を知っているのか。

「カトレアだ。どうして……」

「祖母が育てていました。こんな立派なものじゃありませんでしたが、山小屋に小さな温室をくっつけていて」

彼はまるでテンペストに触れたときと同じように、優しく花びらに触れた。

「気難しいけど、手間をかける価値があるって言っていました」

私は彼の顔を見つめながら、車椅子で近づいた。

「他に何を育てていたんだ?」

「ほとんどは薬草ですね。しばらくの間、あの辺りではばあちゃんが医者代わりみたいなものでしたから」

彼の微笑みは、今度は悲しげなものに変わっていた。

「皮肉なことに、人を癒す知識をあれだけ持っているのに、自分自身は癒せないんです」

これか。彼が抱える痛みは。

「見せてみて」

私は衝動的に言った。

「何をです?」

「お前の祖母さんが教えたことをだ。ここにお前が興味を持つかもしれない薬草がいくつかある」

それから一時間、私たちは共に温室の中を巡った。川端海斗は、植物学の学位を持つほとんどの人間よりも植物に詳しかった。薬効、生育条件、さらには交配種まで見分けることができた。

彼が頼まれもしないのに、弱っていたジャスミンの鉢を丁寧に植え替えているのを見たとき、私はあることに気づいた。それは私を不安にさせるべきことだった。

これはもう、訓練だけの話じゃない。

午後の陽が傾き、温室のガラスを通して長い影を落としていた。川端海斗が腕時計に目をやる。

「そろそろ大学に戻らないと。今夜、図書館でバイトがあるんです」

当然だろう。祖母の治療費を稼ぐための、もう一つの仕事。

私たちは、彼のくたびれたトラックが停めてある正面の車道へと戻った。ガーメントバッグは、まだ彼の肩にかかっている。

「明日も同じ時間でいいか?」と私は尋ねた。

「また来てほしいなら」

毎日でも来てほしい。

その思いがあまりに突然、そして完全な形で私を襲い、もう少しで口に出してしまうところだった。

「また明日だ」

彼はトラックに乗り込み、窓を開けた。

「ありがとうございます、丸幸さん。このすべてに。僕には、こんな……」

「やめて」

私は彼の窓に車椅子を寄せた。

「あなたは、自分が思っている以上のものを受け取る資格がある」

彼は長い間私を見つめ、その緑色の瞳の中で何かが揺れ動いた。

そして彼は車を走り去らせた。車道に一人残された私の中に、何か重要なことが始まったばかりだという、奇妙な感覚だけが残された。

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