第6章

何かがおかしい。

その日の午後、川端海斗が厩舎に入ってきた瞬間にそう感じた。レッスン中も彼は口数が少なく、私の質問には、いつもの気さくな会話とは程遠い、単語一つで答えるだけだった。

今は二人でテンペストの手入れをしているけれど、私たちの間には壁でもあるかのように沈黙が広がっていた。

「今日のレッスン、良かったわ」

緊張をほぐそうと、私は言った。

「ああ」

それだけ。ただ「ああ」と。

一体どうしたんだろう?

彼が機械的な動きでテンペストの毛並みをブラッシングするのを見ていた。そこには何の喜びもない。馬との繋がりも感じられない。

「海斗、何か悩みでもあるの?」

...

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