第6章

エヴリン視点

 三年後。

 私は研究所の大きな窓の前に立ち、遠くに連なるアルプスの雪嶺を眺めていた。

 三年に及ぶ隔離研究が、もうすぐ終わる。

 無意識に、肩に届く短い髪に触れる。三年前、シカゴを離れるときに切ったまま――それ以来、伸ばそうとは思わなかった。

 かつてアレクサンダーの指先に絡め取られていた長い髪も、あの耐えがたい過去も。五年前、私は全部置き捨ててきたはずだった。

「エヴリン、またぼーっとしてるのか?」

 背後から、聞き慣れたロシア訛りが落ちてくる。

 ドミトリ・ヴォルコフがコーヒーを二つ手にして近づいてきた。背の高い、整った顔立ちのロシア人が、夕陽の中で柔らか...

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