第119話ワインの中の何か

ケストラ夫人のにやりとした笑みが、ほんのわずかにしぼんだ。じっと見つめてでもいなければ気づかないほどの、かすかな変化だった。

ベラドンナは食堂のほうへ二、三歩進んでから、ケストラ夫人がまだついて来ていないことに気づき、たずねた。

「ケストラ、夕食にはいらっしゃらないの?」

「少しだけ席を外させてください。すぐに参りますわ」

「そう。では、テーブルでお待ちしていますね。あまり長く待たせて、私に寂しい思いをさせないでくださいな」

ケストラは短く笑い声を漏らした。

きっと魔法のせいで頭がぼんやりしているのだ。忘却の魔法を使うと、いつも彼女には何かしらの影響が出る。それが妙に奇妙だった。まる...

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