第148話スパイスは遠すぎる

彼女の太腿がゆっくりと開き、下唇に歯を立てたときの痛みに意識を向けていた。指先が受け入れるようにひらいた秘裂のあいだを滑り、脈打つそこを押し上げるたび、全身を駆け抜ける快楽から気を逸らそうとしていたのだ。

「濡れてる」

彼女を見つめる彼の顎の奥で、何かがかすかに軋んだ。

「すごく、濡れてると思う」

その音が彼には聞こえていた。それが、少しも助けにならない。こんなにも耳がいいことが、今はまるで救いにならなかった。

彼女が指を上下させるたび、そのひと撫でごと、そのひと擦りごとに、彼には何もかも聞こえてしまう。

もう、これ以上は堪えられなかった。彼は明確な意志を宿した足取りで部屋を横切り...

ログインして続きを読む