第166話ぬくもりが消える

彼女を抱く腕はいっそう強くなり、閉じたまぶたの下から涙があふれ出した。塩気を含んだ雫は頬に広がって顔をぐしゃぐしゃに濡らしていく。

胸の内に押し込めようとしていた感情のせいで、顔は熱を帯びていた。

その手が抱擁から彼女をそっと引き離そうとしたが、彼女はしがみついたまま離れようとしなかった。すすり泣きは全身を揺らし、しゃくり上げるほどになっていた。

「どうして泣いているの?」

少し沈んだ声で彼女は尋ねた。両手が頬を包み、涙をぬぐっていく。

「わたしのせい? わたしがあなたを悲しませるの、ママ?」

「まさか。おまえがわたしを悲しませたことなんて、一度もないわ」

「じゃあ、どうして泣く...

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