第56話死が近づいてきた

アラリスはこのところ、ひどく忙しかった。

己の門を作り出すために、知っていてまだ試していない呪文はもうなかった。捧げていない必要な心臓もなく、差し出していない血もなかった。自分の血でさえ、その混じりものの中に加えていた。知り得る限りのことはすべて試した。だが、そのどれひとつとしてうまくいかなかった。

苛立たしいにもほどがあった。

時間は彼の計画においてきわめて重要だった。この人間界で足止めを食えば食うほど、彼が目的を成し遂げられる可能性は、完全な徒労と不可能のほうへとさまよっていく。

だが、彼を苛立たせているのはそれだけではなかった。

あの口づけのことが、絶えず脳裏をよぎったのだ。腹...

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