第85章-私はあなたが欲しくない

彼が身を引くまで、ほんの一瞬だった。痛みがその瞳に閃く。

「やめてくれ。もう二度と、頼むから。俺にお前の唇を差し出すな。残りを手に入れられないと分かっているくせに」

彼女はぱちりと瞬きをして、それからうなずいた。

「その通りよ。私、あなたを――あなたなんて欲しく……欲しくない。腹が立ってる――あなたは私に嘘をついた。まだ腹が立ってる――すごく腹が立ってる――私、行かなきゃ。でないと、何か……私……」言葉とは裏腹に、彼女は沈黙のたびに彼の襟元をつかむ手に力を込め、さらに引き寄せた。熱を帯びた視線が、彼の唇に吸い寄せられていく。

酔いにも似た欲望が彼女の目に走り、彼は戸惑いに眉を寄せて首を...

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