54-イクラ・イクルス

彼女は彼の手を乱暴に振りほどいた。あの馬鹿げた接触から生まれた火花が、もうすでに血の中を暴れ回っているのを感じる。こんなふうに反応してしまう自分の身体が、自分を裏切っているようで腹立たしかった。

そのことが、彼女をいっそう苛立たせた。

味方してくれないのは、心だけではなく身体までもだった。

「あなたは気が狂ってるわ!」彼女は歯の隙間から吐き出すように言った。「何だっていうの、あなたは! 狂った獣じゃない! いったい何のつもりなの!?」

「怪我をしている」彼の声には、彼女を逆上させるあの落ち着きが宿っていた。そしてまた、彼は彼女の手に触れようとした。

「嫌よ!」彼女は身を引いた。

「...

ログインして続きを読む