第53章-ささいなこと

「何かあったのか?」

「はい、陛下。ただ――」そう言いかけた声が、廊下をこちらへ駆け下りてくる衛兵の、慌ただしい靴音にかき消された。

「へ、へい……か、へいか……っ」息を切らして呼びかけ、男は膝をついた。用件を口にするより先に、王の問いが飛ぶ。

「用意は整ったか?」

「はっ、陛下」

「下がれ」王は、逃げるように去っていく衛兵から視線を外し、ベラドンナへ戻した。「王国の重要案件だ」

王は廊下を歩き出し、彼女はそれに従って後を追う。

「あ、はい」

自分が話そうとしていたことなど、いまやすっかり忘れられてしまったようだ。いったい何が、そこまで急を要するのか――彼女は考えた。

「私が...

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