第81章-(封印されていない)出入り口

「私の家族の身の上話で、君を退屈させてしまっただろうか?」

「退屈なんてしていません」

「自分のことを君に尋ねなかったのは、不公平な気がしてね」

彼女は眉をひそめた。手にした本も、その上に大きく描かれた絵柄も、意識の中でぼやけてゆき、ただの背景へと退いていく。思考は、目の前にあるものとは別のところへ流れていた。

彼女の頭にあったのは、ただひとつ――家族というものが、自分にとってどれほど大きな弱みだったかということだった。花嫁泥棒は、その脆い渇望をたやすく利用し、彼女が注意深くなければ、まんまと逃げおおせていたはずだ。欠けているもの、その空洞ばかりに心は囚われ、その虚しさが脳裏を満たして...

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