第86話クローズ・デンジャー

そのとき、ようやく彼女にもはっきり見える場所――木のそばに、一人の少年が立っていた。そしてその少年は、ありえない形で宙に浮かぶ心臓を、目に恐怖を宿して見つめていた。

「気でも狂ったのか、レックス。お前、父上の種馬を殺したんだぞ」

「心臓集めだよ」子どもらしい弾んだ声が返ってきた。「心臓を集めたいんだ!」

「見てごらん、あの目のいかれそうなほどの誇らしさを」花嫁泥棒の声が彼女の耳にふわりと流れこんだ。「素敵だと思わないかい?」

興味があるふりをして、ベラドンナは前方を見つめたまま、やがて敗北したようにふうと息をついて後ろへもたれた。

「その子、姿が見えないのね」

人質のようだと、これ...

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