第99章-彼女の運がいいだけ

彼女の手首を締めつけていた力は、これ以上ないほど素早くほどけた。

エリは廊下のずっと先、かなり距離のあるところにいた。近づくほどに、その瞳の奥で怒りが煮え立っていくのが見て取れる。ベラドンナは彼の姿を捉えた途端、震える息を吐き出し、安堵に胸を撫で下ろした。

私のエリ。

「エリ……」唇の下で囁くように呼び、彼女はぐらつく脚で前へ踏み出した。けれど一歩ごとに力が抜けていく。秒単位で、身体が弱っていくのがわかった。

だが、そこまで歩く必要はなかった。彼は瞬く間に彼女の傍らへ現れ、肩から外した外套をそのまま彼女に巻きつけた。まるで最初からそうするつもりだったかのように、淀みのない動きだった。な...

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